生産者で異なる素材の個性(開店経緯④)

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農業従事と拘りの種類(開店経緯③)】の続きとなります。

帰国後、以前から計画していた事業を開始して運営する傍ら、ジェラートが好き過ぎて、同時にジェラテリアの開店計画を進めていました。
イタリアにあるような、地元の老若男女も気軽に通えるようなジェラテリアを作りたいと思い、ひっそりとジェラート作りに励んでいました。
しかし、突如コロナウイルスが日本に襲来し、事業に大きな支障が出始めた事で、ジェラテリア計画も滞り始めました。

そんなとき、高校時代からの友人が神戸市西区押部谷でトマトファームを開園しました。
農園主となった友人からお誘いしていただき、コロナ禍の間、暫く働かせてもらう事になったのが彼のトマト農園です。
オーストラリアで従事した巨大農園とは異なり、友人のトマト農園は、小規模ですが高い質のものを作る事に強い拘りをもっていました。

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トマトが熟すまでの流れは苺と似ていて、寒暖差や日当たりの違いによって、甘みや生長具合が左右されます。
オーストラリアで働いた苺農園がある場所は、一日の寒暖差が激しく、自然に任せていました。
一方、友人のトマト農園は立派なビニールハウス内にあり、夏は日差しが強くなり過ぎないように天井カーテンのような設備で調整し、冬は冷えすぎないように暖房で温度を保っています。

このビニールハウスを建てるには相当な建設費がかかり、暖房やファン、その他の様々な設備費、大きなランニングコストが発生します。
しかし、手間や費用がかかる分、出来上がったトマトのクオリティは格別です。

また農園主は、自らのトマト修行経験を活かして、目利きで栽培を行なっていました。
基準は非常に厳しく、完熟したものだけを収穫しています。
ここで働き始めた当初は、オーストラリアでの経験から、その拘り具合に驚かされました。

手間暇を厭わず、消費者へ最大限に良いものを出したいという思いは、まさにイタリアでジェラテリアの店主が話していた、プライドやパッションの部分です。
良いものを作るには、拘りや手間、リスクも必要で、それが完成品で顕著に表れるところは、農作物でもジェラートでも同じだと思います。

そして何より、彼のように良いものを作りたいという決意や気概がなければ、逸品は作れないということがはっきりと分かり、ものづくりの基本も学ばせて頂きました。

また、彼のような生産者が作った農作物を使わせて頂き、ジェラートを作りたいという考えが強くなり、素材や生産者へより関心をもつようになりました。

ここで働いた理由は、オーストラリアのときと同じで、農業に強く興味があったから、というわけではありません。
しかし、農業や農作物、生産者について知ることができ、今のジェラート作りにも影響しています。
これはジェラート作りをするための、何か縁だったのかもしれない、と都合の良いように考えています。

神戸の王子公園でジェラート店(開店経緯⑤)】に続く

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