製造初日から計3日間で、アシスタントして頂いたR65さんや現地職人スタッフらのおかげで、提出する全作品を何とか作り終える見通しが立ちました。
今回の自信作は、課題部門で提出するストラッチャテッラと自由部門で提出するジェラートの2種。
アシスタントして頂いた、味にシビアな熟練イタリア職人のピーターに、作ったフレーバーを食べて頂きましたが、なかでもストラッチャテッラは気に入ってもらえたようです。
真顔で「…Buono(うまい)」と言いながら、何度も食べてくれてた事は大変嬉しく、これだけでもイタリアへ来た甲斐があったと思います。
自由部門で提出したジェラートは、日本素材の抹茶や酒粕、イタリア人が好きな珈琲やマスカルポーネを組み合わせ、イタリア人の審査員向けに開発した作品です。
こちらは別会社様のジェラート機器で製造させて頂き、試食してくれたイタリア人ジェラティエーレらには好評で、日本で試作していたものと同じように出来上がった作品でした。
また、日本でもお世話になっているスタッフのグイードさんにもアシスタントして頂き、大変お世話になりました。
そして、事件が起こったのは作品提出期限の12時まで、あと2時間と迫ったときのこと。
最後に作り終えたジェラートを急速冷凍しているとき、他の出場者のジェラートが預けていた会社の冷凍庫内で紛失した、という情報が舞い込んできました。
その紛失したかたが預けたという会社の冷凍庫には、私が前日までに作り終えたジェラートも預かったもらっていました。
念のため確認したところ、なんと私が自由部門で提出する予定のジェラートも紛失していることが発覚。
これにはイタリア人ばりに両手で頭を抱えました。
開業前から長年計画していたこの大会で、締め切り1時間前の紛失発覚はショックを通り越して呆然。
しかし、どうするか十分に考える暇もなく、機器を使用させてくださった会社様が、宿にある材料を取りに帰るためのタクシーを手配してくださり、現地スタッフ様にも同伴して頂きました。
その間、タクシー内で同伴してくださったスタッフさんにお願いし、戻った時にすぐ作れるように機材や材料を手配して頂くように会場のスタッフさんにお願いしました。
とんぼ返りで製造場所に戻り、作り直したものの、材料と時間不足で、完全に元通りのクオリティにはなりませんでした。
しかし、アシスタントして下さった現地スタッフの皆様、そして私のために道具を用意してくださった伊豆のR65さんや、提出時間ぎりぎりに提出場所まで猛ダッシュしてくださった職人仲間らには、本当に感謝しています。
大慌てで作品を提出した後、予選の審査が開始されましたが、疲れ切ってしまい、殆ど見ていません。
予選を通過した上位10品は表彰作品となり、決勝ではこの中から順位を決定していきます。
決勝では、ジェラート関係者からなる審査員らに合計50点満点で審査されます。
この決勝に残った作品は、予選と同じく番号で呼ばれるため、作り手が誰かは最後の発表時までわからないシステムになっています。
疲れ切ってしまい、決勝もぼーっと見ていたのですが、審査が終わり、結果発表のときもうわの空でした。
まずは課題部門ストラッチャテッラの結果発表が始まり、10位から順に発表され、8、7位にはイタリア人らが呼ばれました。
そして、次の6位発表で、司会の方から私の名前が読み上げられました。
一瞬聞き間違いかと思いましたが、会場モニターにも間違いなく私の名前が映し出された後、ステージに呼ばれ、表彰して頂きました。
この大会は、5年以内に上位10位までに入ることを目標にしていましたが、今回ジェラートの巨匠らに6位入賞という形で認めて頂けたのは本当に嬉しく思っています。
さらに老若男女のイタリア人から大人気の定番フレーバー、ストラッチャテッラで受賞できた事は大変価値があると感じています。
ちなみに結果発表もあまり聞いていなかったので、後になって知った事ですが、総合得点で6位(私)~5位は37点、4~3位は38点、2位は39点だったので、50点満点中のわずか2点差に5作品が拮抗していた事になります(同点となった場合は再審査、再々審査が行われます)。
欲を言うと、あと2点あれば…なんて思ったりもしますが、この2点が世界の壁なのかもしれません。
またいつか挑戦することがあれば、この2点を埋めれるように力をつけたいと思います。
また、自由部門の紛失して作り直したフレーバーですが、こちらは特別賞(Special Mention)を与えられました。
今大会では私を含めて3名(社)に与えられたそうです。
賞状には「Special Mention」の下に「Miglior Interpretazione del gusto Italiano (直訳でイタリアの味を最も解釈) 」という概要が書かれていますが、内容的には「イタリアの味をベスト演出(もっとも解釈)し、自らのオリジナリティを含んでいる。」というニュアンスがあるとの事です。
イタリア人にジェラートを認めてもらいたいと思い、この大会に参加したので、本来の目標でもあり、この特別賞は大変喜ばしいことです。
しかし、特別賞を渡された時は、てっきり参加賞だと勘違いしており、これが特別賞だと分かったのは大会から約3週間後、とっくに日本へ帰ってきてからのことでした。
関係者に確認して、これが特別賞(Special Mention)だとわかったのですが、全てイタリア語で説明されたので、大きな思い違いをしていました。